実家が空き家になると、家族が困ること

「まだ親も元気だし、実家のことなんて考えなくていい」 「誰も住まなくなったら、そのうち売ればいい」

そう考えて先送りにしていませんか? 実は今、日本中で「実家の空き家」が家族を苦しめる深刻なトラブルの種になっています。総務省の調査によると、日本の空き家数は過去最多の約900万戸に達しました。 親が施設に入居したり、入院したりして実家が空き家になると、家族には「金銭的な負担」「近隣トラブルのリスク」、そして「売りたくても売れない」という三重苦が襲いかかる可能性があります。

本稿では、実家が空き家になると具体的にどのような困りごとが起きるのか、そして最悪の事態を防ぐために今できる対策について解説します。

 

「持っているだけ」でお金が消えていく


実家が空き家になると、まず直面するのが「コスト」の問題です。誰も住んでいなくても、不動産を所有しているだけで維持費がかかり続けます。

 

年間数十万円の「負動産」化

空き家の維持には、固定資産税や都市計画税といった税金に加え、火災保険料、電気・水道の基本料金(通水・換気のため)、庭木の剪定費用などがかかります。マンションの場合は管理費や修繕積立金も重くのしかかります。試算によると、都内に実家がある場合、年間で50万円〜100万円近くの維持費がかかるケースもあり、5年間放置すれば数百万円単位のお金が消えていくことになります。実家がマンションの場合には、マンション自体も年老いているケースが多く、大規模修繕で多額の負担が発生する可能性も高いです。資産であるはずの実家が、お金を食いつぶす「負動産」になってしまうのです。

 

「特定空家」に指定されると税金が6倍に?

さらに恐ろしいのが、管理不全で倒壊の恐れや衛生上の問題があると自治体に判断され、「特定空家等」に指定されてしまうケースです。 行政からの勧告を受けると、「住宅用地の特例(固定資産税が6分の1になる減税措置)」が適用されなくなり、固定資産税が最大で6倍、都市計画税が3倍に跳ね上がる可能性があります。

 

ご近所に迷惑をかけ、損害賠償のリスクも

「お金の問題なら我慢すればいい」と思うかもしれませんが、空き家のリスクはそれだけではありません。建物が劣化することで、近隣住民や通行人に危害を加えてしまう恐れがあります。

 

数千万円の損害賠償請求も

台風で屋根瓦や外壁が飛んで隣の家を壊したり、通行人に怪我をさせたりした場合、その責任は所有者(親、あるいは相続した子供)が負わなければなりません。 実際に、外壁材の落下による死亡事故で約5,630万円もの損害賠償額が試算されたケースや、空き家からの出火(放火や漏電)で隣家が全焼し、多額の賠償責任が発生したケースもあります。

 

犯罪の温床になるリスク

誰もいない家は、ゴミの不法投棄の場所になったり、不審者が侵入して住み着いたりするリスクもあります。実際に、空き家に侵入したホームレスが死亡し、そのまま事故物件になってしまったという事例も報告されています。 「うちは田舎だから大丈夫」とは言えません。むしろ目の届かない場所にある実家ほど、気づかないうちにリスクが進行しているのです。

 

「売りたい」と思ったときに売れない恐怖

「売りたい」と思ったときに売れない恐怖
「維持費もかかるし、リスクも怖い。だったら売ってしまおう」 そう決断したときに立ちはだかるのが、「認知症による資産凍結」の壁です。

 

認知症になると契約ができない

不動産を売却したり、人に貸したりする契約には、所有者本人の「意思能力(判断能力)」が必要です。 もし、親が認知症になり判断能力を失ってしまうと、たとえ家族であっても勝手に実家を売ることはできません。これを「資産凍結」と呼びます。 「親の介護費用を実家の売却代金で賄おう」と当てにしていた計画が、認知症によってすべて白紙になり、子供が自腹で親の介護費用を負担せざるを得なくなる可能性も少なくありません。

 

成年後見制度のハードル

凍結された実家を売るためには、家庭裁判所に申し立てて「成年後見人」をつけてもらう必要があります。しかし、これには高いハードルがあります。

実家の売却には裁判所の許可が必要: 裁判所は本人の住環境を守ることを重視するため、単に「空き家だから」という理由だけでは売却を許可しないことがあります。
専門家報酬がかかる: 弁護士や司法書士が後見人になると、月額数万円の報酬が親の亡くなるまで発生し続けます。

つまり、何の対策もしないまま親が認知症になると、実家は「売ることも貸すこともできない塩漬け状態」になり、コストとリスクだけを背負い続けることになるのです。

 

税金の特例が使えず、手取りが減る

実家を売却するタイミングを逃すと、税制面でも大きな損をすることになります。 それが「空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除(空き家特例)」や、親が住んでいる間に売却する場合の「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除(マイホーム特例)」です。
これらの特例を使えば、売却益から最大3,000万円を控除できるため、税金(譲渡所得税)をゼロにできる可能性があります。しかし、これには厳しい期限があります。

 

期限の壁

親が老人ホームに入居して空き家になった場合、住まなくなってから3年目の年末までに売却しなければ、特例が使えなくなる可能性があります。
「親が元気なうちは……」と先延ばしにしているうちに認知症になり、売却できないまま時間が過ぎ特例の期限が切れていた、という「もったいない」事例が多いのです。特例が使えないと、手取り額が数百万円単位で減ってしまうこともあります。

 

解決策:元気なうちの「実家信託」

こうした「空き家リスク」「資産凍結」「税金の損失」をまとめて解決する手段として注目されているのが、「実家信託(実家に特化した家族信託)」です。

 

実家信託とは?

親が元気なうちに、実家の名義を信頼できる子供(受託者)に移し、管理・処分を任せる契約を結ぶ仕組みです。 名義は子供に移りますが、実質的な価値(利益)は親のままなので、贈与税はかかりません。

 

実家信託のメリット

1. 認知症でも売却可能: 親が認知症になっても、名義人である子供の判断でスムーズに実家を売却・賃貸できます。成年後見制度を使う必要はありません。
2. 介護費用の捻出: 実家を売却したお金は、信託契約に基づいて親の介護や生活費のために使うことができます。
3. 税制メリットの活用: 親が生前のうちに売却すれば「マイホーム特例」が使え、手取り額を最大化できます。また、相続発生後も一定の条件を満たせば「空き家特例」を使える可能性も残されています。

 

まとめ:早めの「家族会議」を!

実家が空き家になると、単に建物が傷むだけでなく、家族の資産や生活、人間関係にまでヒビが入る可能性があります。 最も避けたいのは、「問題が起きてから慌てること」です。親が認知症になってからでは、取れる対策は限られてしまいます。

介護離職を防ぎ、親の資産を守り、家族が困らないようにするためには、親が元気なうちに話し合うことが不可欠です。 年末年始やお盆の時期など、家族が集まるタイミングこそが最大のチャンスです。 「実家をどうするか」「もし介護が必要になったらお金はどうするか」 最初は切り出しにくいかもしれませんが、「近所で空き家トラブルがあったらしいよ」「最近、認知症で口座が凍結される話を聞いたんだけど」といった話題から、少しずつ「未来の安心」に向けた家族会議を始めてみてはいかがでしょうか。

早めの対策が、実家を「負動産」ではなく、家族を助ける「富動産」に変えるカギとなります。

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代表者紹介
NHK「クローズアップ現代プラス」に出演。「家族信託のトップランナー、司法書士」

早くから認知症対策のへの必要性を感じ、10年以上前から家族信託に取り組む。取扱い実績の総額は100億円を超える。

家族信託業界の先頭に立ち、相談者様が安心して使えるようグレーゾーンを明確化にも注力。税理士と協力して行った国税照会により公表されたルールが業界のスタンダードにもなっている。

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■テレビ出演
・NHK「あさイチ」
・NHK「クローズアップ現代プラス」
・NHK「ニュースウォッチ9」
・NHKラジオ「三宅民夫のマイあさ!」
・日本記者クラブにて記者会見

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