認知症による資産凍結リスクの診断(資産凍結ポイントの洗い出し:預金・不動産・有価証券)
人生100年時代と言われる現代、長生きは喜ばしいことですが、同時に避けて通れないリスクがあります。それが「認知症」による資産の凍結です。 2025年には65歳以上の約5人に1人、2040年には約4人に1人が認知症になると予測されています。さらに、軽度認知障害(MCI)を含めるとその数はさらに膨れ上がります。
親が認知症になり判断能力を失うと、たとえ家族であっても親の財産を動かすことができなくなります。これを「資産凍結」と呼びます。 「親の介護費用は親の貯蓄から出せばいい」と考えている方は多いですが、実際には口座が凍結され、子どもが自分のお金で親の介護費用を立て替えざるを得なくなるケースが後を絶ちません。
本記事では、「認知症 預金」「認知症 不動産」「認知症 有価証券」の3つのキーワードを中心に、どこに凍結のリスクが潜んでいるのか、そのポイントを洗い出し、診断していきます。
【認知症 預金】口座が凍結されると生活費も引き出せない?
最も身近で、かつ影響が大きいのが預金の凍結です。
銀行は本人の意思確認を厳格に行う
多くの人が「親の通帳と印鑑さえあれば、家族がお金をおろせる」と誤解しています。しかし、金融機関は口座名義人が認知症である事実(意思能力がないこと)を知ると、本人の財産保護のために口座を凍結(入出金の停止)します。 一度凍結されると、暗証番号を知っていても、家族が窓口に行っても、原則としてお金を引き出すことはできません。たとえ用途が「親の医療費」や「介護施設の入居一時金」であっても同様です。成年後見制度のハードル
凍結された口座からお金をおろすためには、「成年後見制度」を利用して家庭裁判所に後見人を選任してもらう必要があります。しかし、この制度にはいくつかの注意点があります。- ⚪︎専門家が選ばれる可能性が高い: 親族が後見人になれるとは限らず、弁護士や司法書士などの専門家が選ばれるケースが約8割を占めます。
- ⚪︎ランニングコストがかかる: 専門家が後見人になると、月額数万円の報酬が発生し、それが親が亡くなるまで続きます。
- ⚪︎柔軟な支出が難しい: 後見人の役割は「財産の保護」であるため、孫への入学祝いや家族旅行の費用、あるいは相続税対策のための生前贈与などは、「本人のためにならない支出」として認められないことが一般的です。
つまり、単に「預金をおろしたい」という理由だけで後見制度を利用し始めると、その後の財産管理において家族の自由が効かなくなり、窮屈な思いをする可能性があるのです。
【認知症 不動産】実家が売れない・貸せない「負動産」リスク
次に注意すべきは不動産です。特に「親の自宅(実家)」は大きなリスクをはらんでいます。
売却・契約には「意思能力」が必須
不動産を売却したり、賃貸に出したり、大規模なリフォーム契約を結んだりするには、所有者本人の判断能力(意思能力)が必要です。 親が認知症になり判断能力を失うと、売買契約書にサインができず、実質的に不動産は「凍結」状態になります。介護費用の捻出ができなくなる
よくあるのが、「親が施設に入居することになったので、空き家になった実家を売却して入居一時金や月額費用に充てたい」というケースです。しかし、この時点で親の認知症が進行していると、売却手続きができません。 預金と同様に成年後見人をつければ売却できる可能性がありますが、居住用不動産(実家)の処分には家庭裁判所の許可が必要です。裁判所は「本人の生活の本拠」を失うことに慎重であるため、他に預貯金がある場合は売却許可が下りないこともあります。空き家の放置によるリスク
売却できないまま放置された実家は、固定資産税や管理費、修繕積立金(マンションの場合)がかかり続けるだけでなく、建物の劣化が進みます。庭木が近隣に迷惑をかけたり、放火のリスクが生じたりと、資産であるはずの実家が、家族を苦しめる「負動産」になりかねません。 また、長期間誰も住まなくなると、「空き家特例(譲渡所得の3000万円特別控除)」の適用期限(住まなくなってから3年目の年末まで)を過ぎてしまい、将来売却できたとしても税金が高くなる恐れもあります。【認知症 有価証券】塩漬け株と経営者のデッドロック
3つ目のポイントは有価証券(株式や投資信託など)です。これは一般投資家だけでなく、中小企業のオーナー経営者にとっても死活問題となります。
上場株式・投資信託の「塩漬け」
証券会社も銀行と同様、本人の意思確認ができなければ取引を停止します。認知症になると、株価が暴落している局面で損切りしたり、逆に利益確定のために売却したりすることができなくなります。 資産運用ができずに「塩漬け」状態となり、資産価値が目減りしていくのを家族は指をくわえて見ているしかありません。これを解消するためにもやはり成年後見制度が必要になりますが、後見人は「元本保証のない運用」を嫌う傾向があり、積極的な運用は難しくなります。中小企業オーナーの「自社株」問題
さらに深刻なのが、中小企業の経営者が自社株を持っている場合です。 経営者が認知症になると、株主としての「議決権」が行使できなくなります。 株主総会が開けないため、以下のような重要事項が決定できなくなります。- ⚪︎取締役の選任・解任(後継者へのバトンタッチができない)
- ⚪︎役員報酬の変更
- ⚪︎定款の変更
- ⚪︎銀行融資の際の担保提供や保証
これを「経営のデッドロック(行き詰まり)」と呼びます。経営者の認知症は、個人の財産問題にとどまらず、会社の存続や従業員の雇用、取引先への影響にまで波及する重大なリスクなのです。
資産凍結リスクの自己診断チェック
ご自身の家族に資産凍結のリスクがどれくらいあるか、以下のポイントでチェックしてみましょう。- 1.親が75歳以上である(後期高齢者になると認知症リスクが急増します)
- 2.親名義の預金口座が複数あり、生活費や介護費用のメインになっている
- 3.親が実家(持ち家)を所有しており、将来売却して介護費用に充てる可能性がある
- 4.親が株式投資や投資信託を行っている
- 5.親が会社経営者(または大株主)である
- 6.「最近、物忘れが増えた」「同じ話を繰り返す」などの兆候がある
これらに当てはまる項目が多いほど、対策の緊急性は高いと言えます。
解決策は「元気なうち」の対策にある
認知症になってから(判断能力を喪失してから)できることは、制約の多い「成年後見制度」に限られてしまいます。しかし、親が元気なうち、あるいは軽度の認知症であっても意思能力が残っているうちであれば、柔軟な対策が可能です。家族信託(民事信託)の活用
今、最も注目されている対策が「家族信託」です。 これは、親が元気なうちに、信頼できる家族(例えば子ども)と信託契約を結び、財産の管理権限を移しておく仕組みです。- ⚪︎預金: 親のお金を「信託口口座」などで子どもが管理。親が認知症になっても、子どもが窓口となって入出金が可能。
- ⚪︎不動産: 名義を形式的に子どもに移す(実家信託など)。親が施設に入った後、子どもの判断で売却や賃貸ができ、そのお金を親のために使える。
- ⚪︎有価証券(自社株): 議決権の行使を後継者(受託者)に託すことで、経営の停滞を防ぐ。
家族信託は、「親の財産を親のために使う」ための仕組みであり、成年後見制度のような裁判所の監督を受けずに、家族の中で柔軟に財産管理ができる点が大きなメリットです。
まとめ
「認知症 預金」「認知症 不動産」「認知症 有価証券」。これらのキーワードは、決して他人事ではありません。 認知症による資産凍結は、徐々に忍び寄ってくることもありますが、急に進むこともあります。また、脳梗塞で瞬時に判断能力を失ってしまう場合もあります。完全に凍結してしまってからでは、解凍(解決)するために多大な時間と費用、そして精神的な労力がかかります。重要なのは、親がまだ判断できるうちに家族で話し合い、「新・相続」と呼ばれる生前対策(家族信託、任意後見、遺言、生命保険)を組み合わせて準備しておくことです。 年末年始やお盆など、家族が集まるタイミングで、親の健康状態や財産管理について、「もしもの時どうする?」と話し合ってみることから始めてみてはいかがでしょうか。それが、親の安心と家族の生活、そして大切な資産を守る第一歩となります。
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代表者紹介
NHK「クローズアップ現代プラス」に出演。「家族信託のトップランナー、司法書士」早くから認知症対策のへの必要性を感じ、10年以上前から家族信託に取り組む。取扱い実績の総額は100億円を超える。
家族信託業界の先頭に立ち、相談者様が安心して使えるようグレーゾーンを明確化にも注力。税理士と協力して行った国税照会により公表されたルールが業界のスタンダードにもなっている。
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・NHK「あさイチ」
・NHK「クローズアップ現代プラス」
・NHK「ニュースウォッチ9」
・NHKラジオ「三宅民夫のマイあさ!」
・日本記者クラブにて記者会見
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