令和3年6月16日施行 株式分散に困っている社長に朗報『所在不明株主からの株式買取がしやすくなります』

こんにちは。
司法書士の友田純平です。

税理士の牧口先生の講義の中から
事業承継に関しての最新動向について
ぜひ知っておきたい情報がありましたので、
お届けします。

会社の創業者や後継者で、
自社株が分散している場合には、
ぜひ知ってほしい内容になります。

最後まで読むと、そもそも所在不明で
交渉のテーブルにもつけなかった株主の株式に
ついての解決方法が見えてきます。

(1)会社を次の世代に繋げるためにも株式の集中化が要る
(2)今までは所在不明株主から買取るには「5年」の要件が必要だった
(3)法改正により、「1年」の要件に短縮できる(但し、要件あり)


(1)会社を次の世代に繋げるためにも株式の集中化が要る


法律専門職の立場から見ると
会社を次の世代に引き継いでいくために
重要なものが「株式」と「定款」です。

後継者が、少なくとも半分以上の「株式」を
保有していないと、力強く会社経営を進めていくことが
できません。

過半数の株式議決権を持っていないと、
自らを取締役に選ぶことも支障がでます。
可能であれば、全株式を集中させたいところです。


そして「定款」について、
本日の記事では多くは触れませんが、
会社は「定款」に縛られます。

定款の内容が事業承継やM&Aなどに
悪影響をもたらすこともあります。

代表的なものが、「株券発行の定めがある場合」です。

相続対策などで、後継者に株式を生前贈与します。
このときに「株券発行の定めがある」会社の場合には、
贈与契約書だけでは不足し、株券を後継者に渡さなければいけません。
売買の場合でも同じです。

実際には株券を発行していない会社でも
定款の内容に拘束されます。

お客様の中でも、「株券発行の定めがある」会社にて
株券を作ってもらい渡してもらったM&A事例もありました。

もしも必要なら定款のチェックも行っていますので、
ご相談ください。

横道にそれましたが、今回の本題は
「株式」についてです。

後継者のためには集中化させるべき。
しかし、株式が分散している会社を
お見かけいたします。

先代社長の他に、先代社長の兄弟姉妹が株式を
持っているなど。

背景を聞くと
「会社を設立に必要で、名前を借り株主になってもらった」

「祖父が創業者だったが、祖父の相続の時に2代目の父だけでなく、
おじさんやおばさんにも株式が相続された」
などが理由です。

1990年(平成2年)の商法改正の前は、
会社を設立するために、株主が7人必要でした。

頭数を揃えるために、株主として名前を借り
そのまま今に至ってしまっている会社も少なくありません。

そして株式が分散していることは
将来、トラブルに繋がりかねません。

後継者に会社を継がせるとしても、
後継者と、おじさんおばさん(または従兄弟)とは、
話をすることが難しい。
もしも反対の意思を表示されてしまったときには、
会社経営を前に進めていけなくなるかもしれません。

また、M&Aをするためにも問題です。
M&Aには、全ての株式を購入者に譲渡することが
求められます。

1株でも譲渡できない場合には、
M&A自体が成立しなることもあるのです。

交渉のテーブルについてくれるのであれば、
金銭での交渉でなんとか解決することもできるでしょう。

しかし大変なのは、

『所在不明株主』です。


どこに居るのか、
死んでるのか生きているのかも
わからない場合には、
交渉をすることもできません。

その方の名義の株式だけが宙に
浮いてしまいます。

そこで会社法では、
所在不明株主の持つ株式について
一定の要件を満たせば買い取れる規定を
置いています。

(2)今までは所在不明株主から買取るには「5年」の要件が必要だった


一定の要件を満たせば
所在不明株主から強制的に株式を買取る
ことができます(会社法197条)。


その一定の要件は下記のとおりです。
(1)株主に対してする通知又は催告が,5年以上継続して到達しなかったとき
(2)その株主が,継続して5年間剰余金の配当を受領しなかったとき
(3)買取る旨を公告し、3ヶ月の期間を設け、異議がでなかったこと。
(4)買取ることについて「裁判所の許可」を得ること(上場株など市場価格がある株式は不要)

このうち、(1)(2)の要件について満たすことが
とても大変でした。


「裁判所の許可」を得るためには、
『5年間分の株主総会招集通知書及び返戻封筒』,
『5年間分の剰余金配当送金通知書及び返戻封筒』を
証拠書類として提出する必要があります。

しかし中小企業の場合には、
株主総会の招集通知などをちゃんと
やっていない会社も多く、
剰余金の配当もしていないため、
いざ、買取りたいときから5年間の期間が
必要になっていました。

既にM&Aを進めようとしている場合などは、
とても間に合いません。
そのため承継について進まないことが問題にあり、
今回の改正にいたりました。

(3)法改正により、「1年」の要件に短縮できる(但し、要件あり)


前述の問題点を踏まえ、

「5年」の要件を、
「1年」に短縮する法改正案が閣議決定され、
令和3年6月16日から施行となりました。


ただし「1年」に短縮するためには、
『経済産業大臣の認定』の認定を
受ける必要があります。

認定される要件については、
下記のように定められました。
———————————
中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律
第12条
1項
ホ 当該中小企業者(株式会社に限る。)の代表者が年齢、
健康状態その他の事情により、継続的かつ安定的に経営を
行うことが困難であるため、当該中小企業者の事業活動の
継続に支障が生じている場合であって、当該中小企業者の
一部の株主の所在が不明であることにより、その経営を当
該代表者以外の者に円滑に承継させることが困難であ
ると認められること。

(引用)経済産業省のHP中、新旧対照条文より。
https://www.meti.go.jp/press/2020/02/20210205001/20210205001.html
———————————

つまりは、代表者が動ける間でないと
実行することは難しい可能性があります。

今日の記事が皆様の役に立てたら嬉しいです。
最後までご覧いただきありがとうございました。

今日のまとめ
(1)会社を次の世代に繋げるためにも株式の集中化が要る
(2)今までは所在不明株主から買取るには「5年」の要件が必要だった
(3)法改正により、「1年」の要件に短縮できる(但し、要件あり)

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