親族候補者が90%なれる??〇%が制限あり??最新の成年後見制度の利用状況についてわかりやすく解説!
<後見制度の傾向>
(1)申立件数は増加。保佐補助類型の件数も増加傾向
(2)申立の動機は、預貯金などの管理解約がトップ
(3)申立人属性は市区町村長申立がトップ。子・本人がほぼ同数という結果。
(4)申立書の候補者に書けば、90%親族が選ばれる??内約50%が制限あり??
司法書士の友田純平です!
コラムでは
現役世代が親の介護で
自身の老後資金と安心生活を壊さないために
必要な情報を発信しています!!
今回は3月16日に発表された
令和3年度の『成年後見関係事件の概況』について
解説します。
『成年後見関係事件の概況』では、
昨年の申立件数や、後見人と本人との関係などを
集計し、最高裁判所事務総局家庭局が公開している
資料になります。
↓↓↓↓↓↓↓クリックするとリンク先に飛びます
成年後見関係事件の概況―令和3年1月~12月―(最高裁判所事務総局家庭局)
成年後見制度がもっと使いやすくなれば、
ほとんどのご家族で家族信託は不要に
なると思っています。
では後見制度の現状はどのように
なってるのかについて、
注目箇所をピックアップして、
見ていきます。
この記事を最後まで
ご覧いただけると、
後見制度の傾向がわかります。
そうすると認知症でつまずく問題の
先読みができ、対策が立てやすくなります。
現状を知らないと対策も出来ませんからね!
1つずつ見ていきます
(1)申立件数は増加。保佐補助類型の件数も増加傾向
1 申立件数について
○ 成年後見関係事件(後見開始、保佐開始、補助開始及び任意後見監督人選任事件)の申立件数は合計で39,809件(前年は37,235件)
であり、対前年比約6.9%の増加となっている。
○ 後見開始の審判の申立件数は28,052件(前年は26,367件)
であり、対前年比約6.4%の増加となっている。
○保佐開始の審判の申立件数は8,178件(前年は7,530件)
であり、対前年比約8.6%の増加となっている。
○ 補助開始の審判の申立件数は2,795件(前年は2,600件)
であり、対前年比約7.5%の増加となっている。
○ 任意後見監督人選任の審判の申立件数は784件(前年は738件)
であり、対前年比約6.2%の増加となっている。
【引用元】成年後見関係事件の概況―令和3年1月~12月―
(最高裁判所事務総局家庭局)
良い傾向と感じています!
過去には保佐又は補助程度の症状の方であっても
重い後見類型としてしまうこともありました。
後見人の側からすると保佐補助ではなく後見の場合には、
本人は自身で契約できる権限を取り上げられてしまい、
後見人だけが代理で契約をすることができるのでやりやすい。
本人の立場からすると、自分で契約をする権限を
奪われてしまうため問題でした。
しかし、保佐・補助の類型であれば、
本人には制限付きですが自身で契約をできる権限が残ります。
今まで、自分のことは自分でやってきた人が
自分で行う権限を全て奪われるというのは
とても困惑します。
自分でやれることは自分でやるというため、
保佐補助の類型が増加傾向なのは
とても嬉しいことです。
また法律的な問題として、
成年被後見人と認定されると、
本人からは訴訟能力も取り上げられます。
そして、本人は後見人に対して損害賠償請求などの訴えを
起こすということもできなくなってしまいます。
(民事訴訟法第31条)
この点については今後、改善して行って欲しいところです
保佐・補助ではそのような条文はありません。
(2)申立の動機は、預貯金などの管理解約がトップ
相談者からよく聞かれる質問で、
「後見制度ってどういう場合に必要になるのですか?」
という質問があります。
その答えが下記の表です。
6 申立ての動機について
○ 主な申立ての動機としては、預貯金等の管理・解約
が最も多く、次いで身上保護となっている。
【引用元】成年後見関係事件の概況―令和3年1月~12月―
(最高裁判所事務総局家庭局)をもとに作成
後見制度の申立ての動機は、
「預貯金等の管理・解約」がトップです。
例えば、寝たきりの父親の預金を下ろしに、
銀行に行ったところ、
銀行員から『本人の意思確認』をしないと下せない旨、
加えて『お父様本人が意思表示できない場合には、
後見制度を利用してもらわないと下ろせません』と
言われ、申し立てに至ったケースが考えられます。
医療費や介護費用、生活費の支出が迫る中、
下せないのは大変です!!
このように銀行窓口で言われたことを、
きっかけとして後見制度の利用をスタートしている方が
一番多いと言えます。
その他の申立て動機も、
手続きや契約の相手先から言われて
申し立てを行ったケースがほとんどであると
現場感では認識しています。
「施設入居時に施設から言われた」
「不動産の処分で、不動産業者や士業専門家から言われた」
など。この傾向を知っていることで、
想定外の事態で後見制度の利用が必要になる事態は
防げると感じています
(3)申立人属性は市区町村長申立がトップ。子・本人がほぼ同数という結果。
4 申立人と本人との関係について
○ 申立人については、市区町村長が最も多く全体の約23.3%
を占め、次いで本人の子(約20.9%)、本人(約20.8%)の順となって
いる。
○ 市区町村長が申し立てたものは9,185件で、前年の8,823件
(前年全体の約23.9%)に比べ、
対前年比約4.1%の増加
となっている。
【引用元】成年後見関係事件の概況―令和3年1月~12月―
(最高裁判所事務総局家庭局)
申立人の属性を見ると
市区町村長の申立てが9,185件で全体の23.3%。
続いて子が8,236件(20.9%)、
本人が8,198件(20.8%)とほぼ同数の
件数になっています。
申立人属性の推移もまとめました。
平成12年からの推移を見ると、
平成24年を境に親族が減少傾向となっています。
一方で市区町村長の申立て、及び本人申立てが増加し、
全体が横ばいという状況になっています。【引用元】成年後見関係事件の概況(最高裁判所事務総局家庭局)を
もとに作成
親族の申立てが減少する一方で、市区町村長の申立てが
成年後見等のスタートの一端を担っているとも言えます。
しかし市区町村長の申立てが必ずしもプラスに
働いているわけではなく、トラブルもあります。
平成29年に23区内で起こったケースで、
娘が同居していて任意後見契約を結んでいたが、
区の職員が虐待されていると考え、
娘から離すために、市区町村長からの申立てで
成年後見開始の申立てをした事件もあります。
当該、申立ての審議の過程で、
家庭裁判所の調査官が本人である母親に
ヒアリングをしたところ、
「娘に任せたい」という意向を聞くことができ、
虐待の事実も確認できなかったため、
後見開始の申立ては却下されました。
締結していた任意後見契約の通り、
娘さんが後見人になりました。
このように行政も完璧ではないので、
もし頼りたい子供や信頼できる人がいる場合には、
あらかじめ任意後見契約などをしておくことを
推奨します。
将来に向かっての自分の意思を残すことが
自身の生活の安心を守ることにつながります。
(4)申立書の候補者に書けば、90%親族が選ばれる??内約50%が制限あり??
続いて、後見人等と本人の関係についてです。
8-1 成年後見人等と本人との関係について
○ 成年後見人等(成年後見人、保佐人及び補助人)と本人との関係をみると、配偶者、親、子、兄弟姉妹及びその他親族が成年後見人等に選任されたものが
全体の約19.8%(前年は約19.7%)
となっている。○ 親族以外が成年後見人等に選任されたものは、
全体の約80.2%(前年は約80.3%)
であり、親族が成年後見人等に選任されたものを上回っている。○ 成年後見人等と本人との関係別件数とその内訳の概略は次のとおりである。
関係別件数(合計) 39,571件(前年36,771件)
親族 7,852件(前年 7,243件)
親族以外 31,719件(前年29,528件)
うち弁護士 8,207件(前年 7,733件)
司法書士 11,965件(前年11,187件)
社会福祉士 5,753件(前年 5,438件)
市民後見人 320件(前年 311件)
【引用元】成年後見関係事件の概況―令和3年1月~12月―
(最高裁判所事務総局家庭局)
グラフより、親族が後見人に就いた件数が7,852件(19.8%)、
親族以外が後見人に就いた件数が31,719件(80.2%)となっており、
専門家が選ばれた割合が全体の約8割となっています。
一方で、昨年から追加された資料で、
「成年後見人等の候補者について(右側のグラフ)」があります。
このグラフによると、当該申立ての時に
『後見人等候補者に親族』を記載している割合は、
全体の23.9%しかいない。
そもそも、候補者として親族を書いている割合が
少ないということです。
とても興味深いデータなので掘り下げて分析をします。
申立書に親族の候補者を記載している割合は23.9%とあり、
件数が載っていないため算出してみます。
母数が「令和3年1月から12月までに認容で終局した、
後見開始、保佐開始及び補助開始の各審判事件のうち、」とされているので、
下記の表中、『任意後見監督人選任』は除き、
『認容』されたものの合計が母数になると推測しました。
【引用元】成年後見関係事件の概況―令和3年1月~12月―
(最高裁判所事務総局家庭局)
そうすると
認容数の合計が36,904件
となります。------------------------------
後見認容26,470+保佐認容7,741+補助開始2,693
⇒合計36,904件
------------------------------
親族の候補者の記載がされた事件数を計算すると、8,820件
と推測できます。
------------------------------
認容で終結した事件×『後見人等候補者に親族』を記載している割合
=36,904件×23.9%⇒8,820件
------------------------------
上記の数字から、『候補者に親族を記載』し、
『実際に親族が選ばれた』割合を計算すると
89%≒約90%となります。
------------------------------
後見人等に親族が選任された件数÷候補者に親族を記載した件数
=7,852件÷8,820件 ⇒89%≒約90%
------------------------------
約9割が選ばれているのはすごいことですね。
平成31年の成年後見制度利用促進専門家会議にて
『本人の利益保護の観点からは,後見人となるに
ふさわしい親族等の身近な支援者がいる場合は,
これらの身近な支援者を後見人に選任することが望ましい』
という考えが示されました。
この意見を受けて、
その親族が選ばれる傾向が高まっており、
統計に表れている。
実際の現場でもそのような傾向が感じられるとの
声も聴きます。
とても好ましいことです。
一方で疑問に感じたこともあります。
成年後見人等の合計が39,571件となっており、
一方で、認容で終局した事件数が36,904件です。
その差が2,667件あります。
------------------------------
39,571件-36,904件⇒2667件
------------------------------
この差について分析しました。
考えられるのは、(注2)より、
複数の後見人等が選任されているケースです。
------------------------------
8-1 成年後見人等と本人との関係について
(注2)
関係別件数とは、成年後見人等が該当する「関係別」の個数を集計したものであり、
1件の終局事件について複数の成年後見人等がある場合に、複数の「関係別」に該当
することがあるため、認容で終局した事件総数とは一致しない。
------------------------------
1人の人の後見人等として『親族』と『専門家』が
就いているという状況です。
そこにも、2パターンあります。
1つ目は、信託設定のための後見人、
2つ目は、権限分掌のための後見人等です。
1つ目は、信託設定のための後見人について
後見制度支援信託を活用する場合には、
その利用のために『専門家の後見人』が選ばれます。
信託銀行への送金が済むと辞任し、
任務が終了する後見人です。
2つ目は、権限分掌のための後見人等について、
身上監護の権限は親族、
財産管理の権限は専門家というように、
役割を決められてしまっている場合です。
権限分掌の場合には、親族後見人がお母さんと相性の良い施設を
探してきても、財産管理権限を持つ専門家後見人が
同意しなければ実現できなくなります。
親族にとっては避けたいパターンです。
まだ後見制度支援信託の利用について
令和3年の統計が公表されていません。
昨年の『後見制度支援信託等の利用状況等について-令和2年1月~12月-』に
よると、新規開始の件数は後見制度支援信託と後見制度支援預貯金とを
合計して、1,030人となっています。
------------------------------
後見制度支援信託の新規開始人数+後見制度支援預貯金の新規開始人数
=523人+507人⇒1,030人
------------------------------
令和3年の数字も同数だとすると、
差の1,600件程が権限分掌パターン(財産管理と身上監護の後見人を分ける)の
複数後見と推測ができます。
------------------------------
複数後見2667件-信託設定1,030人
⇒1,637件≒約1,600件
『後見制度支援信託等の利用状況等について-令和2年1月~12月-』
より↑↑↑↑↑↑クリックするとリンク先に飛びます
------------------------------
また、『成年後見関係事件の概況―令和3年1月~12月―』
に戻りますが、認容で終局した後見等事件のうち、
成年後見監督人等が選任された事件が1,174件あります。
8-2 成年後見監督人等が選任された事件数について
○ 認容で終局した後見開始、保佐開始及び補助開始事件(36,904件)のうち、成年後見監督人等(成年後見監督人、保佐監督人及び補助監督人)
が選任されたものは1,174件であり、全体の約3.2%(前年は約3.3%)である。
○ 成年後見監督人等が選任された件数とその内訳は次のとおりである。
件数(合 計)1,174件(前年1,138件)
弁護士 528件(前年 503件)
司法書士 474件(前年 490件)
社会福祉士 5件(前年 10件)
社会福祉協議会126件(前年 102件)
税理士 0件(前年 3件)
その他 41件(前年 30件)
【引用元】成年後見関係事件の概況―令和3年1月~12月―
(最高裁判所事務総局家庭局)
監督人が選任された事件の全てが親族後見だったと仮定すると、
複数後見となった件数(信託設定、権限分掌)と
後見監督人等が選任された件数を合計すると、
3,841件となり、親族後見7,852件中の
約50%は何らかの制限付きと考えられます。
------------------------------
複数後見となった件数+後見監督人等が選任された件数
=2,667件+1,174件 ⇒3,841件
3,841件÷後見人に親族がなった件数7,852件
⇒48.9%≒50%
------------------------------
また、当該統計資料では、
あくまで開始時の統計データになるため、
既に親族が後見人等になっている事件に
家裁の判断で新たに後見監督人等を追加、信託の設定、
権限分掌のための後見人追加がされた件数は
現れてきません。
この内容のデータをお持ちの方が
いたら是非ご連絡ください。
いずれにしても、令和3年度の成年後見関係事件の数値が
公開され、内容としては良い方向に進んでいるのではないかという
印象を持っています。
ただ、現時点ではまだ利用者目線での、
使いたいと思う制度運用にはなっていないというのが
正直な印象です。
家族信託を検討する家庭で、
後見制度の現状については関心事の1つです。
今回の分析がその一つの参考になれば嬉しいです。
最後までご覧頂きどうもありがとうございました。
——————————
<まとめ>
(1)申立件数は増加。保佐補助類型の件数も増加傾向
(2)申立の動機は、預貯金などの管理解約がトップ
(3)申立人属性は市区町村長申立がトップ。子・本人がほぼ同数という結果。
(4)申立書の候補者に書けば、90%親族が選ばれる??内約50%が制限あり??
——————————
【参考】
成年後見関係事件の概況―令和3年1月~12月
https://www.courts.go.jp/vc-files/courts/2021/20220316koukengaikyou-r3.pdf
後見制度支援信託等の利用状況等について-令和2年1月~12月-
https://www.courts.go.jp/vc-files/courts/2021/20210528sintakugaikyou_R02.pdf
司法書士法人ソレイユへのお問い合わせは
こちら
オンラインでご面談をご希望の方は
こちら
SEARCH
早くから認知症対策のへの必要性を感じ、10年以上前から家族信託に取り組む。取扱い実績の総額は100億円を超える。
家族信託業界の先頭に立ち、相談者様が安心して使えるようグレーゾーンを明確化にも注力。税理士と協力して行った国税照会により公表されたルールが業界のスタンダードにもなっている。
実績、お客様へのアフターフォローサービス、家族信託のお手伝いをしたお客様の声は、『代表者紹介ページはこちら』ボタンをクリック
メディア出演履歴
■テレビ出演
・NHK「あさイチ」
・NHK「クローズアップ現代プラス」
・NHK「ニュースウォッチ9」
・NHKラジオ「三宅民夫のマイあさ!」
・日本記者クラブにて記者会見
CATEGORY