親の財産が知らぬ間に…巧妙化する高齢者を狙う詐欺に対抗する究極の防衛策

category:

親の財産が知らぬ間に…巧妙化する高齢者を狙う詐欺に対抗する究極の防衛策

巧妙化する高齢者への不動産詐欺の実態

最近、高齢者が悪質な不動産詐欺に遭い、多額の金銭をだまし取られたり、相場の何倍もの価格で物件を買わされたりする事件が多発しています。「不動産投資で安定した家賃収入が得られます」などと高齢者を勧誘し、仕入れ値の7倍以上でマンションの部屋を売り付けたとして、不動産会社の社長らが逮捕された事件は大きな波紋を呼びました。 先日、この事件についてNHKの取材依頼があり、私が高齢者資産の資産管理に詳しい専門家として解説をさせていただきました。

本コラムに掲載しているのは、その取材をお受けした時の写真です。
逮捕された「寿不動産」の事件は、極めて悪質で巧妙な手口でした。彼らは埼玉県川越市において300万円で仕入れた物件を、都内の70代の女性に「2200万円の価値がある」と伝えて売り付けるなどし、被害者は1都3県の70代から90代の高齢者39人にのぼり、被害総額は約7億4500万円に達するとみられています。1人あたりの平均被害額は約1910万円にもなり、老後の大切な資金が一瞬にして奪い去られてしまったのです。

 

「終活支援」を装い、資産額に合わせて価格を決める恐るべき手口

この事件が従来の詐欺と異なるのは、そのアプローチ方法です。いきなり電話で売り込むのではなく、「終活支援」を名乗って関係者が高齢者の自宅を何度も訪問します。そして、親身になって話し相手になり、顔見知りのような距離感で接触することで、貯金や年金、不動産などの資産状況を詳細に聞き出すのです。

最大のポイントは、販売価格が「一律」ではないことです。300万円の物件を2200万円で販売するなど、この価格は被害者の資産額に応じて「ギリギリ払える金額」に設定されていました。信頼関係を築かれた相手から、「銀行に預けるより格段に収益が得られます」「不動産を相続すれば節税になります」と専門家らしく断言されると、高齢者は無意識にその言葉を信じ込み、提示された価格に疑問を持ちにくくなってしまうのです。

さらに恐ろしいことに、この会社の代表は指定暴力団の傘下組織幹部だと報じられています。合法的な不動産会社という外見をまといながら、登記上の住所には看板も事務所もなく、電話も繋がらない状態で、最初から「売り逃げ」を前提とした暴力団の新たな資金源となっている現実があります。

 

なぜ高齢者は騙されるのか?「自分は大丈夫」という過信の落とし穴

被害者の9割は「一人暮らし」でした。一人暮らしの高齢者は、将来への不安や孤独感を抱えていることが多く、親身に寄り添ってくれる訪問者を信頼し、心を許してしまう傾向にあります。また、加齢に伴う判断力や処理速度の低下につけ込み、「今日だけ」と急がせることで、考える時間を奪います。 特に注意が必要なのが、認知症と診断される手前の「軽度認知障害(MCI)」の段階にある方々です。現在、日本国内に約564万人いると言われるMCIの高齢者は、「自分はまだまだしっかりしている」「自分は大丈夫だ」と思い込み、他者に支援を求めようとしない傾向があります。

これは、長年自らの力で会社を引っ張り、決断を下してきた中小企業のオーナー経営者にも強く当てはまる特徴です。 そして、詐欺業者は決まって「誰にも言うな」と巧妙に口止めをします。万が一だまされたと本人が気づいても、恥ずかしさから家族に被害を隠してしまうことが少なくありません。結果として、離れて暮らす子どもが実家の通帳の不審な出金に気づき、事態が深刻化してから発覚するケースが後を絶たないのです。

しかも、刑事事件として業者が逮捕されたとしても、実体のない会社からだまし取られたお金が戻ってくる可能性は極めて低いというのが残酷な現実です。

 

親をトラブルから守るための「家族のコミュニケーション」

このような悪質な詐欺から親を守るためには、高齢者が一人で大きなお金を動かす決断をさせない環境づくりが不可欠です。日頃から親の資産状況を把握し、異変に気づきやすい状況を作っておく必要があります。 NHK「あさイチ」に出演した際、私は親から財産情報を聞き出すための「3つのポイント」をお話ししました。これは、事業承継対策として日頃から経営者の皆様にお伝えしていることでもあります。

第一に、「時間をかける」こと。親との間に本音で財産の話ができる信頼関係を築くには、3年から5年はかかると想定し、焦らず少しずつ話を進めることが大切です。
第二に、「おいしい食事と共に」話すこと。「財産を狙っているのでは」と警戒されないよう、食事やお酒を交えながら、リラックスした雰囲気で将来の不安について話し合うのが効果的です。
第三に、「俳優になる」こと。親子間ではどうしても感情的な対立が生じやすいものです。子どもとしてはイライラを「我慢する」のではなく、親を安心させるために「優しく演じる」つもりで接することで、冷静に対応できるようになります。

 

財産と会社を守る究極の防波堤「家族信託」の活用

しかし、親の資産状況を把握し、コミュニケーションをとるだけでは、巧妙な詐欺師の洗脳から親を完全に守り切ることはできません。そこでお勧めしたいのが、「家族信託」を活用した事前の防衛策です。

家族信託とは、親が元気で判断能力があるうちに、金銭や不動産などの名義を信頼できる子どもや親族、あるいは法人に変更し、財産の管理や処分を任せる法的な仕組みです。名義は子どもに変わりますが、その財産から得られる利益は引き続き親が受け取るため、「贈与」には当たりません。贈与税が課税される心配もなく、いわば「親のお金を子ども名義の安全なお財布に入れて守る」イメージです。

家族信託を利用して親の預金を信託専用の口座(信託口口座)に移しておけば、親名義の通帳に多額の現金を残さずに済みます。契約の当事者・管理者は名義人である子どもになるため、親が単独で勝手に不動産を売買したり、高額な預金を引き出したりすることができなくなります。詐欺業者が親に近づいてお金を引き出そうとしても、物理的に不可能となるため、詐欺被害を未然に防ぐ強力な防波堤となるのです。万一の場合も必ず受託者である子どもに確認がいくため、家族の目がしっかりと届くようになります。

特に中小企業のオーナー経営者の場合、親の個人財産と会社財産が密接に結びついていることが多くあります。もし親が数千万円規模の詐欺事件に巻き込まれれば、個人の老後資金が奪われるだけでなく、会社経営そのものに重大な悪影響を及ぼす可能性すらあるのです。

 

認知症による「資産の凍結」を防ぎ、事業承継を円滑にする

さらに、家族信託には詐欺対策だけでなく、親が重度の認知症になってしまった場合に起こる「資産の凍結」を防ぐという極めて重要な効果があります。

親が認知症で判断能力を失うと、不動産の売却や預金の引き出しが一切できなくなります。成年後見制度を利用するという手もありますが、後見人には弁護士や司法書士などの専門家が選ばれることが多く、継続的な報酬が発生します。また、後見人は「本人の財産を減らさないこと(現状維持)」を原則とするため、柔軟な財産管理や、会社が融資を受けるための不動産担保設定などが認められないケースが大半です。

しかし、事前に家族信託(実家信託など)を行っていれば、親が認知症になっても成年後見制度を利用することなく、子どもが必要な時に不動産を売却して親の介護費用や施設入居費に充てることが可能です。また、自社株を信託しておけば、議決権の行使を後継者に任せることができるため、親の健康状態に関わらず、会社経営を止めずにスムーズな事業承継を進めることができます。

「うちの親はしっかりしているから」「まだ早い」という過信や先送りは禁物です。高齢化社会において、何もしないことは「現状維持」ではなく「解決困難なリスクの放置」に他なりません。大切な家族の老後と、100年続く会社の未来を守るためにも、親が元気で判断能力がある今こそ、家族信託を活用した財産管理や事業承継について、ぜひご家族で話し合ってみてはいかがでしょうか。

 

 

ご不明な点は、
司法書士法人ソレイユまで
お問い合わせください

SEARCH

代表者紹介
NHK「クローズアップ現代プラス」に出演。「家族信託のトップランナー、司法書士」

早くから認知症対策のへの必要性を感じ、10年以上前から家族信託に取り組む。取扱い実績の総額は100億円を超える。

家族信託業界の先頭に立ち、相談者様が安心して使えるようグレーゾーンを明確化にも注力。税理士と協力して行った国税照会により公表されたルールが業界のスタンダードにもなっている。

実績、お客様へのアフターフォローサービス、家族信託のお手伝いをしたお客様の声は、『代表者紹介ページはこちら』ボタンをクリック

メディア出演履歴
■テレビ出演
・NHK「あさイチ」
・NHK「クローズアップ現代プラス」
・NHK「ニュースウォッチ9」
・NHKラジオ「三宅民夫のマイあさ!」
・日本記者クラブにて記者会見

代表者紹介ページはこちら

CATEGORY