親が遺言を残してくれた、でも不動産の相続ができない?
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「親が遺言を書いてくれているから安心」──そう思っている方に、ぜひ知ってほしい現実があります。遺言の「種類」と「保管方法」によっては、相続手続きが止まってしまうケースがあるのです。
本記事では、実際に起きた「危険な遺言」のトラブル事例をもとに、子供が知っておくべきリスクと正しい備え方を解説します。
「自筆証書遺言+自宅保管」が持つ落とし穴
「危険な遺言」とは、手書きで作成した「自筆証書遺言」を自宅で保管しているケースです。
自筆証書遺言は、費用をかけずに自分一人で作れる反面、相続が発生した時に「家庭裁判所での検認手続き」が必要になります。検認とは、相続人全員が出席するもとで、裁判官が遺言を開封し「亡くなった方が書いたものに間違いないか」を確認する作業です。
この時に、一人の相続人が「遺言者の筆跡とは違う気がする」と言うと──その一言が検認調書に記録されてしまいます。
「筆跡が違う」──たった一言で相続が止まった事例
実際にこんな事例がありました。未婚で子供もいない方が、住んでいた自宅をA子さん(妹)に相続させる内容の自筆証書遺言を残していました。A子さんにも伝えてあり、遺言は自宅で保管されていました。
相続が発生し、法定相続人は兄弟姉妹と甥姪の計6人。A子さんは遺言に基づいて手続きを進めようとしましたが、家庭裁判所の検認の場で、相続人の1人が「遺言者の筆跡とは違うと思う」と発言しました。
その発言が検認調書に記載されると、不動産の相続登記を申請しても登記所から拒否されてしまいます。登記を進めるためには、異議を唱えた相続人から「遺言書の通りに登記してよい」という承諾書(実印押印+印鑑証明書)をもらう必要があります。
しかし、この事例では承諾書をもらえず、相続手続きが完全にストップしてしまいました。もし生前に遺言を公証役場で作成していれば、このような問題は起きませんでした。
法改正で「遺言があっても負ける」ケースが生まれた
もう一つ知っておいてほしいのが、令和元年の民法改正による相続ルールの変化です。改正前は「遺言があれば安心」でしたが、改正後は「早い者勝ち」に変わりました。
たとえば、父がアパートを長男に相続させる遺言を残していた場合。実は、次男は遺言の存在を隠して、自分の法定相続分の登記を勝手に行い、その持分を持分買取業者に売却することができてしまいます。長男の同意は不要です。
改正前は、長男が遺言の効果でアパートを取り戻せましたが、改正後は「先に登記した方が勝つ」ルールになりました。持分買取業者が登記を完了してしまうと、長男は遺言があっても取り戻せなくなるのです。
そして、自筆証書遺言は家庭裁判所の検認手続きに1~2ヶ月かかるため、その間に先行されてしまう危険があります。
相続人に借金がある場合にも要注意
悪意のある相続人だけでなく、相続人の債権者が動くケースも注意が必要です。相続人に借金があり、債権者が相続財産から回収しようとする場合、「債権者代位権」を使って法定相続分で相続登記を勝手に行い、その持分を差し押さえることができます。先に登記されてしまうと、遺言があっても取り戻すことは困難になります。
解決策は「公証役場での遺言作成」
これらの問題を防ぐには、公証役場で「公正証書遺言」を作成することが有効です。公正証書遺言のメリットは次の通りです。
①相続発生後にすぐに使用でき、家庭裁判所の検認手続きが不要です。
②公証役場で保管されるため、紛失や改ざんのリスクがありません。
③専門家が関与して作成するため、内容の不備が生じにくいです。
遺言を使うのは遺言者本人ではなく、残された家族です。知識が少ない状況で手続きをスムーズに進められるよう、「使いやすい形式」で残しておくことが、最大の思いやりになります。
親が「手書きで遺言を書いた」という場合、ぜひ一度、専門家に相談してみてください。
また、現在、国会にて遺言の改正法が審議中です。あたらしい遺言の形態として保管証書遺言というのが創設される予定です。
国家戦略としても遺言を後押しして相続トラブルを防ぎたい方向性を感じます。ぜひ残された人の負担を軽くする、そのような要素も取り入れて遺言を作成してください。
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