株主高齢者の認知症が明るみになる!?令和4年1月31日からスタート『実質的支配者リスト』をわかりやすく解説!

こんにちは!
司法書士の友田純平です。

このコラムでは、
現役世代が
親の介護で自身の老後資金と安心生活を
壊さないために必要な情報を発信しています!!

今回のテーマは、

今年の1月31日からスタートした
『実質的支配者リスト』制度についてです。


1.『実質的支配者リスト』とは
(1)『実質的支配者』って何?
(2)『実質的支配者リスト』制度のメリット
(3)『実質的支配者リスト』の留意点
2.『実質的支配者リスト』手続き方法について
3.大株主の認知症などが明るみになる可能性について


『実質的支配者リスト』制度は
実質的支配者(Beneficial Owner)の
頭文字をとり、『BOリスト』と呼ぶこともあります。

『実質的支配者』という考えは、
以前からも存在していました!

例えば金融機関で会社の口座開設をするとき等に、
会社の『実質的支配者』を証明する書類の提出が
求められていました。

今回の『実質的支配者リスト』制度は、
その確認方法を拡充したものになります。

これにより高齢の大株主の
認知症や脳梗塞によるに意思能力喪失が
銀行などに知られるきっかけになるかもしれない!?

口座凍結や成年後見制度の利用の要請に
繋がる可能性がある!?

このような点について、
経営者の認知症等から
会社の経営を守る専門家として、
本日は解説をしていきたいと思います。

認知症対策という側面以外でも
会社経営者やその支援者にとって
社会的ニーズとして知っておいた方が良い
情報も盛り込みました。

是非最後までご覧頂けたら嬉しいです

1.『実質的支配者リスト』とは


(1)『実質的支配者』って何?


実質的支配者については、
犯罪収益移転防止法という法律に定められています。

当該法律の背景は、
マネーロンダリング(資金洗浄)や
テロリストなどへの資金移動を防ぐことです。

そのため金融機関や、弁護士、私たちの司法書士等に
取引先への本人確認が義務づけられました。

個人の場合には本人確認が容易です。
しかし、会社の場合には、
窓口に来た方の本人確認を
すれば足りるということにはなりません。

当該会社を「実際に支配している人」が
誰なのかを、証明させることが
日本国内だけではなく、
国外からの要請としても高まってきました。

この「会社を実際に支配している人」のことを
『実質的支配者』と呼び、金融機関等にて
確認を義務付けていました。



『実質的支配者』が誰になるかは下記の順になります。
——————————

<誰が実質的支配者になるか?>

第1順位:
議決権総数のうち、50%を超える議決権を有する者

※この者が当該会社の事業経営を実質的に支配する意思又は
能力がないことが明らかな場合を除く。



第2順位:
議決権総数のうち、25%を超える議決権を有する者

※この者が当該会社の事業経営を実質的に支配する意思又は
能力がないことが明らかな場合を除く。



第3順位:
出資・融資・取引その他の関係を通じて事業活動に

支配的な影響力を有すると認められる者

第4順位
法人を代表し、その業務を執行する者


※印の表記が本記事で重要な点のため
後ほど触れます。

株式会社(「資本多数決法人」ともいう)を
想像するとわかりやすいのですが、
会社の支配者というと、『大株主』になります。

そのため、
まずは50%(過半数)を超える株式を保有する株主【第1順位】。
もしもいなかったら、
25%(4分の1)を超える株式を保有する株主【第2順位】、
を届け出ます。

【第3順位】については、株式を持たないけれど
影響力を有している者になります。

例えば、創業者一族が支配的な立場を有し、
事業経営を事実上支配しているケースなどです。

【第1順位】から【第3順位】まで該当者がいなかった場合には、
【第4順位】として法人の代表者を『実質的支配者』として
届け出ることになります。

(2)『実質的支配者リスト』制度のメリット


今までは、金融機関や特定の専門士業に
『実質的支配者』の直接の確認を任せていたところ、
その負担の一部を法務局が担う制度が、
この『実質的支配者リスト』制度です。



株式会社等のみで、
合同会社等の持分会社や一般社団法人などは対象外です。

制度の導入により、次の効果が期待できます。

■メリット1:金融機関等にとっての確認負担の軽減、精度の向上

今までは、個々の支店の窓口担当者が会社より書類提出を受け、
確認していました。
しかし、担当者が必ずしも会社法や
会社の専門書類(株主名簿、別表2など)に
長けているわけではありません。

一方で、法務局は会社の登記も管轄していますので、
精度向上が見込まれ、標準化も図れます。

また金融機関等では、法務局にて発行された
『実質的支配者リスト』を提出させ確認すればいいので、
確認コストも低減できます。

■メリット2:会社の代表者にとっての書類準備負担の軽減

会社の代表者にとっては、金融機関ごとに
それぞれ指示された書類を個別に準備することが
求められてしまいました。

しかし制度導入により、
法務局にのみ必要書類を提出し、
取得した『実質的支配者リスト』を
それぞれの金融機関等に提出すれば
良いとすることで、負担軽減が見込めます。

制度導入により
このような2つのメリットから、
社会全体のコストを下げられる
期待があります

(3)『実質的支配者リスト』の留意点


この『実質的支配者リスト』については、
まだ完ぺきではありません。

『実質的支配者リスト』制度では、実質的支配者のうち
【第1順位(50%超え)】、【第2順位(25%超え)】の場合しか、
利用ができません。
つまり、法務局へ『実質的支配者リスト』の作成申出ができないのです。

背景は、議決権数であれば、
株主名簿などから形式的に判断できるため
と考えられます。

『実質的支配者』の確認手段については
まだまだ研究段階です。

『実質的支配者』の確認品質精度を高めようとすると、
申出会社の代表者に求める提出書類が多くなり、
負担が増し、利用されない制度になる可能性があります。

そのような、品質と運用面のバランスから
現時点、導入できる形でスタートしたというのが、
検討中の議論などを見ての『実質的支配者リスト』制度への
私の印象です。

また、『実質的支配者』という用語の認知を高めることも
狙いにあります。

まだまだ経営者でも知らない方が多く
「前にはそのような書類は求められなかった」と
言われることも金融機関側ではあるようです。

『実質的支配者』の確認は、国内国外を問わず
社会的な要請です。

今回の『実質的支配者リスト』制度のスタートは
その1歩で、今後も制度の強化や拡充がされていくのだと
思います。

2.『実質的支配者リスト』手続き方法について


大まかな流れは下記になります。
<手続きの流れ>
(1)『実質的支配者リスト』(案)及び申出書の作成、
   必要添付書類の準備

(2)法務局に提出 
※手数料無料。代理人申出・郵送による申出も可能

(3)法務局登記官による確認

(4)『実質的支配者リスト』の写しの交付
※提出から、写しの交付までにかかる時間については確認中。
広島法務局発信の情報によると、24時間程度とのこと。

(5)当該『実質的支配者リスト』の写しを金融機関などに提出

(6)後日に、『実質的支配者リスト』の写しの再交付申請も可能

必要添付書類について、
「必須の書類」と「任意の書類」があります。

この必要添付書類についてが
前述した、確認品質と運用のための負担軽減の
バランスに悩み、スタートしたと感じる箇所です。

1)添付が『必須』となる書類について


〇申出会社の申出日における株主名簿の写し
株主名簿の代わりに、
公証役場発行の「申告受理及び認証証明書」(会社設立時に取得するもの、期限あり)や
「法人税確定申告書別表2の明細書の写し」を
添付することも認められてる。
〇『実質的支配者リスト』の記載と前述の株主名簿の写し等の内容が
合致していない場合には、
その理由を記載した代表者作成にかかる書面

2)『任意』提出の書類について


〇支配法人の申出日における株主名簿の写しなど
〇支配法人について合致していない場合には理由を明らかにする書面
〇実質的支配者の本人確認の書面

3)上記に加え


申出会社の会社代表印の押印、
または
代表者の本人確認書面の
添付が求められます。

以上、添付書類について確認しましたが、
気になるのは『任意』の提出書類です。

本当は提出させることで確認品質が
高まる書類でも『任意』となっています。


「〇支配法人の申出日における株主名簿の写しなど」について
支配法人というのは、『実質的支配者』が議決権の50%超を
保有する会社のことをいいます。

例えば申出会社をA株式会社とします。
A株式会社の50%超の議決権をB株式会社が
保有していたとします。

この場合に
B株式会社の議決権の50%超を
Xさんが保有していた場合、
XさんはA株式会社の『実質的支配者』になります。

Xさんは、B株式会社を通して、
A株式会社の50%超の議決権を
保有しているためです。
間接保有といっています。

そして、B株式会社をXさんの支配法人といいます。

ここで考えてみてください!?

A株式会社の『実質的支配者』を
確認したいと思ったとき!

本来であれば、B株式会社の株主名簿も提出をさせて、
Xさんが「本当にB株式会社の50%を有しているのか」を
確認する必要があります。

そうでないと、XさんはA株式会社の
『実質的支配者』かどうかの裏付けはとれません。
しかし、B株式会社の株主名簿は任意提出となっています。

もう一つ物足りない点として、
「〇実質的支配者の本人確認の書面」について
マネーロンダリングやテロ組織への資金移動を予防することが、
目的であれば、
当該『実質的支配者』が実在し、本人かどうかまで
確認をしないと不十分です。

もしも、架空の人物であった場合、
なりすましだった場合には、
悪の組織にお金が流れてしまうかもしれません。

しかし、「実質的支配者の本人確認の書面
(運転免許証、マイナンバーカード、住民票の写し等)」は
「任意」提出書類となっています。


「任意」書類については
提出がされなくても『実質的支配者リスト』の写しの
作成申出は受理されます。

もしも「任意」書類を提出した場合には、
『実質的支配者リスト』の写しにその旨が記載をされる
という取り扱いをしています。

このように不十分となった背景は、
申出会社の代表者に、
大株主の会社(言い換えれば出資してもらっている会社)の
株主名簿などを必須としてしまうと、
協力が得られず申出ができないこと、
過度な負担を背負わせてしまう危険性が
考えられたための配慮のようです。

前述の通り、
現在できる導入できる形でスタートした制度であるため、
今後、必要な添付書類が強化される可能性もあります。
この点については注目していきたいところです。

3.大株主の認知症などがばれる可能性について


長かったですが、いよいよ本題です。

冒頭の『実質的支配者』が誰になるのかの説明中に
【第1順位】【第2順位】の記載の箇所に

『※この者が当該会社の事業経営を実質的に支配する意思又は
能力がないことが明らかな場合を除く。』

とも記載していました。


具体的には、どのようなケースがあてはまるのか?
下記の Q & A が公表されています
——————————
Q質問
新規則第11条第2項第1号、第3号イの

「事業経営を実質的に支配する意思又は能力を
有していないことが明らかな場合」

として、
どのような場合が想定されるか。

A質問に対する考え方
例えば、信託銀行が信託勘定を通じて4分の1を超える議決権等を有
する場合や、4分の1を超える議決権等を有する者が病気等により支配
意思を欠く場合のほか、4分の1を超える議決権等を有する者が、名義
上の保有者に過ぎず、他に株式取得資金の拠出者等がいて、当該議決権
等を有している者に議決権行使に係る決定権等がないような場合が考え
られます。
(引用)No.97

https://public-comment.e-gov.go.jp/servlet/PcmFileDownload?seqNo=0000133365


——————————

ここで問題になるのは、
認知症や脳梗塞などの後遺症があり、
判断能力が低下をしている場合にも
該当するのかという問題です。


該当する場合に
どのくらいの症状から
対象となるのかという疑問もあります。

この点については正確には
公表されていません。

個人的な考えですが、

認知症や脳梗塞等で十分な意思判断ができない場合には、
「事業経営を実質的に支配する意思又は能力を」有している
とは言えないのではないか。


そして実質的支配者を明らかにするという趣旨からは、
たとえ50%超の議決権を保有していたとしても
『実質的支配者』として申告することは難しいのではないか
と感じました。


加えて『実質的支配者リスト』制度の導入によって
責任が重くなったと感じています。

今まで銀行に対して
『実質的支配者』の証明として株主名簿などを
提出していた時には、
たとえ当該大株主高齢者が
「事業経営を実質的に支配する意思又は能力を
有していな」かったとしても、
銀行から掘り下げて確認をされなければ、
銀行側の確認不十分の問題であり、
会社側はペナルティを受けずにすんでいたかもしれません。

しかし、『実質的支配者リスト』の作成となると、
「事業経営を実質的に支配する意思又は能力を
有していない」ことを知っていて
『実質的支配者』として提出した場合には、
最悪の場合、「公正証書原本不実記載罪」などに
該当し、刑事罰に当たる可能性があります。

また、正直に申告をすると、制度の利用対象外となるため
法務局での、『実質的支配者リスト』の申出はできず、
写しを発行してもらうことができません。

この場合の解決策として、
金融機関等に対して
【第3順位】または【第4順位】の者を
『実質的支配者』として申告すると想像します。
しかし、これらの経緯を金融機関等に説明した場合に、
大株主高齢者の認知症などが
金融機関等に分かってしまいます。



そうすると、大株主高齢者の名義の預金が
当該金融機関等にあった場合には、
凍結される事態に発展する可能性があります


また会社の大株主が認知症等の状態と知られてしまうと、
金融機関等から、「リスクのある会社」とレッテルを
貼られることにもなりかねません。

『実質的支配者リスト』求める運用は、
まだ任意です。

金融機関全体としても、
まだ確立されたものではありません。

ただ既にホームページ上に提出を求める旨、
記載をしている金融機関もあります。

三菱UFJ銀行では実際に記載をされていました。
(引用)「(※4)「実質的支配者リストの写し」の提示をお願いしております。法務省「実質的支配者リスト制度」(任意)利用のご検討をお願いします。」

https://www.bk.mufg.jp/ippan/law/kakunin_henkou.html



「事業経営を実質的に支配する意思又は能力を
有していないことが明らかな場合」という記述は、
今回追加されたものではなく、
犯罪による収益の移転防止に関する法律施行規則にて
以前から明記をされてきたものです。

そのため今後も、当該記載が削除されるということは
考えづらいです。

1月31日からスタートした
『実質的支配者リスト』制度は
まだ任意ですが。

前述の通り研究中で発展途上のものでもあります。

今後、『実質的支配者』の確認について、
新しい法律が追加され求められる基準が高くなる可能性も
考えられます。

会社の透明性を求める社会的要請がある中で、
安定経営を目指すなら、
大株主が高齢化している場合には
生前の株式譲渡や、家族信託、任意後見など
早めの対策を計画し実行していくこと良いと
改めて感じました。


最後までお読みいただきありがとうございました。

まとめ
1.『実質的支配者リスト』とは
(1)『実質的支配者』って何?
(2)『実質的支配者リスト』制度のメリット
(3)『実質的支配者リスト』の留意点
2.『実質的支配者リスト』手続き方法について
3.大株主の認知症などがばれる可能性について

(参考ページ)
実質的支配者リスト制度の創設(令和4年1月31日運用開始)

https://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_00116.html#:~:text=%EF%BC%88%E2%80%BB%EF%BC%89%20%E5%AE%9F%E8%B3%AA%E7%9A%84%E6%94%AF%E9%85%8D%E8%80%85,%E5%B9%B4%E6%B3%95%E5%BE%8B%E7%AC%AC%EF%BC%92%EF%BC%92%E5%8F%B7%E3%80%82



実質的支配者リスト制度Q&A

https://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_00119.html#1-6



商業登記所における法人の実質的支配者情報の把握促進に関する研究会

https://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_00044.html



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