家族信託が救う「8050問題」と「親なき後」の未来〜資産防衛を超えた“生活防衛”としての活用法〜
「家族信託」と聞くと、資産家の相続税対策や、単なる認知症対策(預金凍結防止)の手段だと思っていませんか? 実は今、家族信託はもっと切実な、現代社会特有の家族問題を解決する「生活防衛の切り札」として注目されています。
今回は、一般的な解説記事ではあまり語られない、「障がいのある子・ひきこもりの子の生活」「おひとり様の財産」「海外居住の家族」という3つの視点から、家族信託の知られざる活用法を解説します。
「8050問題」と「親なき後」のジレンマ
現在、80代の親が50代のひきこもりや無職の子どもを支える「8050問題」が社会現象となっています。また、知的障がいや精神障がいのあるお子さんを持つ親御さんにとって、自分が亡くなった後の子どもの生活、いわゆる「親なき後問題」は、死んでも死にきれないほどの深い悩みです。多くの親御さんは、「自分が亡くなった後、子どもが路頭に迷わないように」と、子ども名義で預金を残したり、不動産を相続させたりしようと考えます。しかし、実はここに大きな落とし穴があります。
「お金」を残しても「使えない」リスク
判断能力が不十分な子どもの名義で多額の財産を残すと、その財産を管理するために、家庭裁判所によって「成年後見人」が選任される可能性が高くなります。 子ども名義の財産が多い場合、親族ではなく、弁護士や司法書士といった専門家が後見人に選ばれる傾向にあります。ここで問題になるのが、後見制度の目的はあくまで「財産の保護(減らさないこと)」にあるという点です。 例えば、「たまには旅行に連れて行ってあげたい」「美味しいものを食べさせてあげたい」といった支出は、後見人によって「本人の生活に必須ではないムダ遣い」と判断され、認められないケースがあるのです。 親が「子どもの幸せのために」と必死で残したお金が、皮肉にも「誰も使えない金庫」の中に塩漬けにされ、子どもが窮屈な生活を強いられる——これが「成年後見のリアル」であり、大きなジレンマです。
家族信託で「お金の使い道」を託す
この問題を解決するのが家族信託です。 親が元気なうちに、信頼できる親族(きょうだいや甥・姪など)を受託者として信託契約を結びます。財産の名義は受託者に移りますが、そこから生じる利益(生活費や家賃収入など)は、親が存命中は親へ、そして親なき後は障がいのある子ども(受益者)が受け取る設計にします。成年後見制度との決定的な違いは、「お金の使い方のルールを親が決められる」点です。 「このお金は、あの子の楽しみのために使ってほしい」「毎月これくらいはお小遣いとして渡してほしい」といった親の想いを契約内容に盛り込むことで、親族による柔軟な支援が可能になります。 財産管理は信頼できる親族に任せつつ、その恩恵は確実に子どもに届ける。家族信託は、親なき後の子どもの「生活の質」を守るための仕組みなのです。
「おひとり様いとこ」の財産が国庫に消える?
未婚率の上昇に伴い、配偶者も子どももおらず、親も既に他界している「おひとり様」が増えています。特に、親族関係が希薄になりがちな「いとこ」の財産管理は盲点になりがちです。いとこは「相続人」ではない
いとこ同士がいかに仲良く交流し、晩年の面倒を見ていたとしても、法的には「いとこ」に相続権はありません。 遺言書がない場合、おひとり様の財産は「相続人不存在」(相続人がいない状態)となり、最終的には国の財庫(国庫)に帰属してしまいます。遺言書のハードルと家族信託の強み
もちろん遺言書を書いてもらえば解決しますが、「財産狙いだと思われたくない」という心理から、親族側からは切り出しにくいのが現実です。また、せっかく遺言を書いてもらっても、認知症が進んだ後に悪意のある第三者にそそのかされ、書き換えられてしまうリスクもあります。家族信託を活用すれば、生前に財産の名義を信頼できる親族(受託者)に移すことができます。「遺言」という言葉を使わずに、実質的に資産の承継先を決めることができるのです。 また、受託者(親族)の判断で、本人のための入院費や施設費用をスムーズに支払うことができるため、お世話をする親族にとっても大きな安心材料となります。 さらに、親族で一般社団法人などを設立して受託者になれば、特定の個人に負担を集中させず、チームで「おひとり様」を見守る体制を作ることも可能です。
海外居住の家族がいる場合の「資産凍結」
グローバル化が進む現代では、子どもが海外で働いていたり、国際結婚をして海外に移住していたりするケースも珍しくありません。 しかし、相続や実家の売却において、「海外居住者がいる」ことは手続き上の大きなリスク要因となります。印鑑証明書がない!手続きがストップする恐怖
日本の不動産売却や遺産分割協議には、「実印」と「印鑑証明書」が必須です。しかし、海外居住者は日本の住民票を抜いていることが多く、印鑑証明書が取得できません。 その代わりとして、現地の領事館などで「サイン証明書」や「宣誓供述書」を取得する必要がありますが、これには多大な手間と時間がかかります。もし、親が亡くなった後に「実家を売却して相続税を払おう」と考えていても、海外居住者との書類のやり取りに数ヶ月を要し、納税期限(10ヶ月以内)に間に合わない、あるいは絶好の売り時を逃してしまうという事態になりかねません。また、意思疎通が難しい状況下では、些細なことで感情的な対立が生まれ、相続紛争に発展するリスクも高まります。
国内の受託者に権限を集約する
このようなケースでも、家族信託が有効です。 親が元気なうちに、日本国内に住む子ども(または信頼できる親族)と信託契約を結び、実家の名義を変えておきます。 そうすれば、いざ売却が必要になったとき、海外にいる兄弟のハンコやサインを待つことなく、国内にいる受託者の判断と手続きだけでスピーディーに売却契約を進めることができます。 売却代金は、信託契約に基づき、海外にいる兄弟も含めた受益者に公平に分配すれば良いのです。これは、国境を越えた家族の絆と資産を守るための、現代的な防衛策と言えるでしょう。まとめ:制度に使われるのではなく、制度を「使う」
これまで見てきたように、家族信託は単なる節税や認知症対策のツールではありません。• 障がいのある子の「幸せな生活」を守るため
• 身寄りのない親族の財産を「国庫」ではなく「世話をした人」に残すため
• 海外に家族がいても「スムーズな資産処分」を実現するため
これらはすべて、既存の法制度(成年後見や通常の相続)だけではカバーしきれない、現代家族特有の課題です。 国連からも日本の成年後見制度に対して廃止を含めた見直しの勧告が出るなど、公的な制度だけでは個人の権利や幸福を十分に守れない局面が浮き彫りになっています。
「うちは資産家じゃないから関係ない」 そう思っているご家庭ほど、実はリスクが高いかもしれません。 資産の多寡にかかわらず、「家族の構成」や「健康状態」、「居住地」に少しでも不安要素がある場合は、家族信託という選択肢を検討してみてください。
まずは、年末年始やお盆など家族が集まるタイミングで、「もしもの時、誰がどうやって守る?」という話を、制度論ではなく「家族の想い」として話し合ってみることから始めてはいかがでしょうか。
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代表者紹介
NHK「クローズアップ現代プラス」に出演。「家族信託のトップランナー、司法書士」早くから認知症対策のへの必要性を感じ、10年以上前から家族信託に取り組む。取扱い実績の総額は100億円を超える。
家族信託業界の先頭に立ち、相談者様が安心して使えるようグレーゾーンを明確化にも注力。税理士と協力して行った国税照会により公表されたルールが業界のスタンダードにもなっている。
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メディア出演履歴
■テレビ出演
・NHK「あさイチ」
・NHK「クローズアップ現代プラス」
・NHK「ニュースウォッチ9」
・NHKラジオ「三宅民夫のマイあさ!」
・日本記者クラブにて記者会見
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