第2回~実家について何も対策をしなかったAさんのお話(2)~
親の実家を自分が売却できると勘違いし、実家について何も対策をしなかったAさんのお話(2)
- ・自分が手続きすれば簡単に売れると思ってた…
- ・立地条件の良い物件なのに…
大阪在住のメーカー勤務Aさんのケース(45歳)
母が介護施設に入るため空き家となった実家を売却しようとしたAさんは、八方ふさがりとなってしまいました。
幸いに、お母様が奇跡的にお元気になられたため、何とか都心から電車で15分以内という好条件のエリアの実家の売買契約書にサインを貰い無事に実家を売却することができました。
実は、Aさんの奥様も、埼玉にご両親が住む実家があります。奥様の兄も家を出て、近々海外に完全に移住するという話が出ており、奥様自身は実家に帰ることは今のところ全く考えられないとか。長い間空き家にすることだけは嫌なので、親が施設に入ったら、ゆくゆくは売却するしかないかと思っているようです。
Aさんは、自分と同じ失敗をさせないためにどうしたらいいのか考えました。
「そうだ、名義を早いところ親から子供に移せばいいんだ!そうすれば子供が自由に処分できる」
ところが、このアイディアは、よくよく調べると、贈与税の負担が重くのしかかってきますし、登録免許税も相続の場合より高額です。
また、奥様はこう言います。「知り合いの司法書士に『不動産は、絶対に共有にしてはいけない』と言われたわ。兄が海外に行ったら処分が簡単にできないじゃないの。処分するには、共有者全員の印鑑証明書と署名が必要になるのよ」
不動産を共有することのリスクはまた別のコラムに改めたいと思いますが、実家を売却しやすくするため、その前に子供に先に贈与するというのは相当負担がかかることのようです。
「ただ、売却の処理をしてもらうために子供に名義を移したいだけなのに…」「そのまま親が住むのだから、売却だけでも我々ができればいいのにね。」と悩むAさんご夫妻ですが、実は、『名義だけ移す』方法が、一つだけあるのです。
それは、「実家信託」です。
Aさんが事前に取るべきだった手段は、Aさんの親からAさんに贈与することではなく、Aさんの親からAさんに「実家信託」することだったと言えます。
Aさんのお母様が委託者兼受益者、Aさんを受託者として実家信託契約を締結します。
信託とは、「名義」と「権利」を分離することに他なりませんから、名義は子供であるAさん、権利は家の持ち主である親に分けることができます。
すなわち、実家信託することで、Aさんのお母様は実家に住み続け、実家の名義だけをAさんに移すことになります。この時の、登録免許税は、普通に贈与(所有権移転)で名義変更するときの約5分の1で済むのです。
もしもAさんのお母様が施設に入り、実家を使わなくなった時はAさんがお母様のサインも印鑑も売却意思も必要なく、単独で売却手続きができます。
売却した後入ったお金はお母様のものとして、施設の費用や医療費等々として使えます。(Aさん個人のためには使えません)
細かいことは「実家信託契約」という契約ですべて決めるのです。
(文責:望月)
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