信託に関する登記について専門家向け解説(委託者の変更)
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信託に関する登記について専門家向け解説
・委託者の変更登記について
・受益者変更登記との違い
・照会事例の紹介
司法書士法人ソレイユの譲矢です。
専門家向け、信託に関心のある方向けに、
信託登記に関する登記実務家の最新の考え方などを
不定期に連載していこうと思います。
※敬称略させていただきます。
専門的な内容となりますが、ご興味のある方は
是非一緒に信託登記について考えていただけると
嬉しく思います。
まず、委託者の変更について、考えていきたいと思います。
委託者は、不動産登記法97条1項号により、
氏名、住所を登記する必要があり、
委託者に変更が生じた場合は、
委託者の変更の登記をする必要があります。
なお、上記は受託者の義務であり、
求められるスピードは、「遅滞なく」です。
(同条)信託目録上の「委託者の変更」とは、
委託者の氏名や住所の変更及び
委託者の主体の変更を含むと解されています。
一般的に、委託者の変更が生じるのは、
委託者兼受益者に相続が発生した場合
などです。もっとも委託者の地位は
受益者の変更等に伴い当然に移転するものではないため、
委託者等の「地位移転条項」が信託契約に
通常設けられることとなります。
さらに、この地位移転条項に関しては、
信託目録の「その他の信託の条項」に
記録されるべき(横山氏:登情704号25頁)と解されています。
信託法第百四十六条(委託者の地位の移転)では
「委託者の地位は、受託者及び受益者の同意を得て、
又は信託行為において定めた方法に従い、
第三者に移転することができる。」とし、
原則として受託者及び受益者の合意により変更できる
と信託法には規定されています。
「委託者の地位は、受託者及び受益者の同意を得て、
又は信託行為において定めた方法に従い、
第三者に移転することができる。」とし、
原則として受託者及び受益者の合意により変更できる
と信託法には規定されています。
信託法上「委託権」という文言はありません。
委託者の地位を有するものが、
委託者の権利を行使できることとなります。
上記に対して受益者(受益権)は異なります。
信託法第2条(定義)
6 この法律において「受益者」とは、受益権を有する者をいう。
7 この法律において「受益権」とは、信託行為に基づいて
受託者が受益者に対し負う債務であって信託財産に属する財産の引渡し
その他の信託財産に係る給付をすべきものに係る債権(以下「受益債権」という。)
及びこれを確保するためにこの法律の規定に基づいて受託者その他の者に対し
一定の行為を求めることができる権利をいう。
6 この法律において「受益者」とは、受益権を有する者をいう。
7 この法律において「受益権」とは、信託行為に基づいて
受託者が受益者に対し負う債務であって信託財産に属する財産の引渡し
その他の信託財産に係る給付をすべきものに係る債権(以下「受益債権」という。)
及びこれを確保するためにこの法律の規定に基づいて受託者その他の者に対し
一定の行為を求めることができる権利をいう。
上記より受益者は受益権の存在が前提となっているように読めます。
まずは受益権の移動があり、それに付随した形で
受益者が(登記上)変更されると考えられます。
信託法には「受益者の地位」という規定がありませんので、
委託者等の地位移転条項に「受益者の地位」を含めることには、
やや疑問が残ります。
あくまで受益者とは
信託法2条7号の受益権を取得した者であるので、
地位と権利は不可分一体ではないかと思われます
しかし登記上は下記のように解し、
処理をされる可能性があります。
下記照会事例をご紹介いたします。
「本受益権が譲渡された場合には譲受人※は
本信託に基づく委託者及び受益者としての権利
及び義務を承継する」との定めがある契約は、
「委託者の地位移転」の旨が記載されていないことをもって、
委託者の地位移転が生じているとは解されないため、
との資格者代理人照会(意見)に対して、
(横山氏:登情704号28頁)
との意見が紹介されています。
本信託に基づく委託者及び受益者としての権利
及び義務を承継する」との定めがある契約は、
「委託者の地位移転」の旨が記載されていないことをもって、
委託者の地位移転が生じているとは解されないため、
委託者の変更登記は不要である
との資格者代理人照会(意見)に対して、
委託者の地位とは、
まさに「委託者としての権利義務」の意味であり、
当事者は「委託者の地位」そのものを指すことを
意図して定めたと解され、
「委託者としての権利義務」の「承継」とは、
「委託者の地位の承継」を意味する趣旨であると考えるのが妥当であり、
委託者の変更登記は必要となる
(横山氏:登情704号28頁)
との意見が紹介されています。
つまり、
例え文言上「権利や義務」と定めていたとしても、
登記上は「委託者の地位」と解されると考えます。
そもそも、権利や義務があるのは「委託者の地位」を有する者であり、
実体上も同様に解し、登記上も上記のように扱うことに問題はないように考えます。
(※原稿は、譲渡人となっていますが、譲受人の誤りであると考えられます。)
続く
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