高齢の親の1人暮らし、認知症と診断されたらどうなる!?起こりうる問題と今から出来る対策11選
「高齢の親が実家で一人暮らしをしています。子どもはみんな家を出て、東京で暮らしています。将来の介護やお金の凍結が心配です」。このようなご相談をいただくことが増えてきました。
離れて暮らしていると、問題が起こってもすぐに駆けつけることができません。また、生活習慣の変化に気づくのが遅れたり、お金まわりのトラブルが起こったりすることもあります。
もし一人暮らしの親が認知症と診断された場合に起こりうる問題と、今からできる対策11選を紹介していきます。
目次
【1】認知症で一人暮らしはできるのか?
認知症と診断された場合の一人暮らしについては、その症状の重さによって、一人暮らしを続けられる場合と難しい場合があります。
もし認知症初期で症状が軽度であれば、一人暮らしができる可能性があります。軽度の認知症の場合には、料理や洗濯といった慣れ親しんだ日常生活は引き続き可能なケースがあるためです。
一方で、中度や重度の認知症に進行してしまうと、一人暮らしは難しいケースが多くなります。日常生活の中でも、食事や排泄をはじめ、人からのサポートを受けなければできないことが増えてくることや、一方で家の中で突然転倒していたり、火の不始末が生じてしまったり、財産を騙し取られるような契約を結んでしまったりと、一人で暮らしていくのがご本人にとっても子供にとっても怖い問題が出てくるためです。
子どもの側も、仕事中に突然連絡が入ってきたり、「お母さん、大丈夫かな」という不安で仕事が手につかなくなってしまったりすることがあります。
親御さんの声を聞くと「自分の家が一番暮らしやすいので、できることなら最後まで家で暮らして天寿を全うしたい」という声もよくいただきます。
お金をかけられれば、介護サービスの中で高頻度で支援に来てもらうなどの仕組みを作り、暮らしていくということも、ある程度までは可能かもしれません。
親御さんが住んでいる地域でどのような介護サービスが提供されているのかを調べ、どこまで対応してもらえるのかをあらかじめ知っておくことも大切です。
【2】認知症の親の一人暮らしで起こるトラブル
認知症の親が一人暮らししている場合に、さまさまなトラブルが起こる可能性があります。特に注意しておきたいトラブルは以下の6つです。
火の不始末:
キッチンで火を消し忘れる、ガスや暖房機器をつけっぱなしにしてしまう。
病気・服薬:
夏の脱水や冬の低体温症、薬の飲み忘れや、飲んだことを忘れてしまうために起きる過剰摂取による副作用など。
栄養の偏り:
食生活の乱れや、同じものを食べ続けてしまうことによる栄養の偏り。また、それに伴う生活習慣病や認知症の悪化のリスクなど。
事故・行方不明:
信号が理解できないことで起きる交通事故や、危険の察知が遅れるために起きる事故、記憶力の低下から起こる徘徊など。
金銭トラブル:
不当な契約(飛び込み営業や高額商品の購入)、高齢者を狙った詐欺被害に遭う可能性。さらに、日常的な金銭管理ができないために起こる家賃・電気・水道料金・固定資産税などの滞納・未払い。
近所トラブル:
片付けられないことに伴う実家がゴミ屋敷となるトラブル。その他、「盗まれた」などと誤解をしてしまうことによる近所トラブルなど。
【3】親の介護のために仕事を辞めることのリスク
(1)介護離職が増加し社会的問題に
このように、一人暮らしをしている親が心配でずっと付き添ってあげたい、そのために仕事を辞める、いわゆる「介護離職」をするという方も増加傾向にあります。
厚生労働省の「雇用動向調査」(2024年)によると、「介護・看護」を理由とする離職は、2000(平成12)年には3.8万人でしたが、増えたり減ったりしながら、2024(令和6)年には約9.3万人と2.4倍以上になっています。
出典元:「介護・看護」を理由とする人数と割合の推移|公益財団法人 生命保険文化センター
しかし、介護離職をしてしまった場合に、子ども自身の収入が途絶えることなどから、自分たちの生活資金や老後資金などが不足し、その次の世代へも悪影響が及びます。
また、介護離職をして24時間高齢の親と一緒に暮らすことによって、当初は想定していなかった精神的なストレスや、親子間での衝突などの問題も生じてきます。
さらに、社会的な観点からは、労働人口がさらに少なくなってしまったり、40代~50代の中堅層が抜けることによって所属していた会社が弱体化したりするなどの問題にもつながります。
このような事情から「育児介護休業法」が改正され、令和7年4月1日から段階的に施行されています。
(2)改正育児介護休業法のポイントは「子どもが離れて介護できる仕組み」を整えること
「育児介護休業法」は育児面と介護面の両方について定めていますが、
介護面での改正の目的は、仕事と介護との両立を目指し、介護離職を防ぐことです。主な内容として、以下の項目が盛り込まれています:
- 介護休業などの制度の周知
- 介護休暇を取得できる労働者の要件緩和
- テレワーク導入の努力義務化
一見、『子ども自身が親の介護を自ら行うこと』を勧めているように見えますが、これは全くの誤解です。
目指すのは、子どもがまとまった休暇を取り、その間に地域包括支援センター、ケアマネージャー、介護サービス事業者などと連絡を取り合って、「子どもが離れて介護できる仕組み」を整えることになります。
こうやって国策としては、仕事と介護とを両立させ、仕事を辞めないようにする方向で動いています。
【4】将来施設に入るときには、どちらのエリアで探すのか?
認知症の親の一人暮らしが心配な場合に考えることは、高齢者施設に入居し、24時間誰かが見ていてくれる、支援を受けられる状況で暮らしていくことではないでしょうか。
その際に、離れて暮らしている場合には、どこのエリアで施設を探すのかという問題が起こってきます。親の慣れ親しんだ地域で探すのか、それとも子どもの生活エリア内で探すのか、という選択です。
親御さん自身の暮らしのことなので、親自身が納得をして進めていかなければいけません。ただ、私たちがご相談をいただいている範囲での話にはなりますが、どちらかというと子ども側の生活エリアに呼び寄せて見ているというケースが多いように感じています。
やはり日常的に子どもの方も会いに行きやすいところの方が、コミュニケーションも取れて安心できますし、万が一の時にも駆けつけやすいということが理由なのではないかと思います。
過去の相談者様では、もともとお父様とお母様が神奈川にずっと暮らしていたけれど、二人で暮らすことが難しくなったため、子どもの住まいである大阪の施設に呼び寄せたというケースもありました。
このご家族は、誰も住まなくなったご実家のマンションについて、あらかじめ「実家信託」で対策をしておいたため、子どもが売却してそちらを介護資金として使用しているそうです。
生活エリアが変わることによって、取引している金融機関が地元にしかないという方もいらっしゃるので、そうしたことも含めての対策はあらかじめしておきたいところです。
【5】親の預金への対策、取引銀行やお金を動かせかなど
親が認知症と診断され、施設に入居することを考えると、次に「その施設の費用はどうするのか」という課題が出てきます。
一番は、親の貯蓄や入ってくる年金から支払っていきたいと考えるご家族がほとんどですし、私たちもそれが一番よい方法だと感じています。
一方で、認知症と診断されると預金が凍結して下ろせなくなるという問題もあります。
この点については、銀行でも「予約型代理人サービス」など親の認知症に備えたサービスを提供する金融機関が増えていることや、任意後見・家族信託などで備えることが安心です。
詳しくは、下記の別コラムにまとめています。
↓
認知症で銀行口座が凍結した実際の事例!口座凍結の流れと対策を解説
※末尾に、「予約型代理人サービスを実施している銀行および信用金庫」一覧を掲載
また、親が離れて暮らしていて、施設入居を機にこちらに呼び寄せる場合に起こる問題として「取引銀行の問題」があります。
高齢の親の開設銀行が、その地元の地方銀行や信用金庫しか開設していないという場合に、子ども側の生活エリアに当該金融機関の支店などがあるかどうかが問題となります。
以下のような場合に、窓口での手続きが求められる可能性があります:
- 施設の費用を自動引き落としに設定したい
- 定期預金で窓口で運用商品を購入していたり、定期預金を解約して普通預金に変えたりしたい
- その他にも支店での対応が必要になった
その際、子どもの住まいの近くに支店がなく、一方で当該銀行の窓口に行くのに負担がかかってしまうという問題が生じます。
このような問題をクリアしておくために、子どもの居住エリアにもある金融機関で口座を作っておくという対策も有効と考えています。
全国に展開しているメガバンクやゆうちょ銀行などであれば、親の地域の支店で開設することもできるでしょう。もしくは、子どもの住まいの方に来てくれたときに口座を開設するというのも一つです。
その際には、上のコラムにあるように「予約型代理人サービス」を提供している銀行だと、なお安心できるかなと思います。
【6】親の住んでいたご自宅、空き家になった不動産の管理
遠方の親を呼び寄せるときに、もともと暮らしていたご実家が持ち家だった場合、その管理や処分が問題となります。暮らしていたところが戸建てなのかマンションかによっても変わってきますので、書き分けてお伝えをします。
(1)暮らしていた家が戸建てだった場合
①空き家に係る維持費用について
住んでいた戸建てが空き家になった場合でも、その維持管理費用は発生します。
自宅の固定資産税が年間数千円から数万円、火災保険の保険料、さらに水道代や電気代などの年間支出がかかります。また、庭がある場合にはその草木の手入れをしないと、近所にも迷惑がかかってきます。
このような支出を考えると、空き家として持っておくことによって、年間数十万円の支出が固定的にかかってきます。
なお、インフラ代についてですが、ガスは止めることができますが、電気や水道は止められないことがほとんどです。理由は、子供が定期的に見に行き、空き家管理の一環として空気の入れ替えや水道での通水などをしないと家が傷んでしまうためです。訪問時に電気や水道が使えないと不便であり、即座に供給してもらえるもの絵もないので結果として毎月の費用を支払い続けることになりがちです。
②空き家のトラブルリスク
また戸建ての場合には、空き家にまつわるトラブルへの対応が必要になります。
例えば、以下のような問題が生じるリスクがあります:
- 知らない人が住み着いてしまう(ホームレスなど)
- 庭にゴミが不法投棄・放置される
- 放火される
- 人が住んでいないことにより老朽化が進んでしまい、瓦が飛んで近所の人に怪我をさせてしまう。失火、もしくは火事になり、周囲に被害を与えて損害賠償責任が発生する
見に行けない距離にある場合や、見に行く時間がない場合には、このような空き家の見回り・管理サービスを提供している会社もあります。
インターネットの検索窓に、実家のある市区町村名と「空き家管理サービス」を並べて(例:「○○市 空き家管理サービス」)検索すると見つけられます。費用は月数千円程度のところが多いようですので、サポートの内容と費用をあわせて確認しておくと安心です。
(2)暮らしていた家がマンションだった場合
マンションの場合には、知らない人が住み着いてしまうなどの危険は少ないですが、先ほどお伝えした「通水」などをちゃんとしないと、水道管の中で水が腐ってしまいます。
ご実家だけでなく、そのマンションの隣や、同じマンションに住んでいる他の人の部屋にも配管がつながっていることから、マンション全体に対して迷惑をかけることになります。
また、マンション特有の修繕積立金や管理費の費用負担も上がってきます。
このような事情から、「もし空き家になった時には、親の実家を手放せるようにしたい」という場合には、事前に「実家信託」をしておくことをおすすめします。
実家信託をしておくことで、子どもの判断と、子どものサイン・印鑑だけで、親の関与を求められずに実家(不動産)を処分することができます。
処分したことにより得た売買代金については子どもが管理をし、親の施設費用や介護費用などで使っていくことができます。
あらかじめ対策をしておくことで、安心度も変わります。
【7】今から家族でできる対策11選
高齢の親が一人暮らしをしている場合に、将来的に施設に呼び寄せるということを想定したときに、今から家族でできる対策11選を紹介します。
親御さんの担当のケアマネージャーさんとの関係を構築しておく
離れて暮らしている場合に、その地域で親のことをサポートしてくれているケアマネージャーさんは誰よりも頼れる存在です。不安なことや心配事などを確認・相談ができるように連絡先を把握し、事前に挨拶するなど、信頼関係を構築しておくことはとても有効です。
かかりつけのお医者さんの連絡先を共有する
親御さんが急に救急車で運ばれたときに、どのような薬を診断・処方されていたか、症状についてどうだったかなどの情報は、迅速な対応をするために重要になります。その際にかかりつけのお医者さんについて、どこで受診していたかなどを知っておくことで、連絡を取り合い、情報を共有してもらいやすくなります。
現地で頼れる親戚がいるかを探しておく
親御さんの住まいが、もともとは両親どちらかの親戚の方も多くいらっしゃる地域ということもあります。その場合に、もしそこに頼れる親戚がいるときには、親御さんのことを定期的に見に行ってくれていたり、小さな頼み事をしたり、もしくは施設に入って空き家になった場合の家の状況などを確認したりなど、お願いできることでこちら側の安心が広がります。もしいらっしゃったら、事前に相談をしておくと良いでしょう。
見守りサービス
今は一人暮らしの高齢者の安否確認などのために、見守りサービスを提供している会社も増えてきました。下記はその一例です。
(a) 冷蔵庫にセンサーを取り付けておき、1日の中で開閉が全くない場合には、あらかじめ登録しておいた人に通知が来るサービス
(b) セコムやアルソックなどのカメラを設置して、倒れていることが発見されたときには緊急駆けつけをするサービス
(c) ガス会社などが提供している見守りサービス などなど
定期預金がある場合には解約をし、普通預金にしておく
定期預金の場合には、銀行窓口に行かないと解約や引き出し手続きができません。親の足腰が元気でまだ動けるうちに普通預金口座にしておくことで、近場のコンビニATMなどで下ろせるようにできます。
親のキャッシュカードと暗証番号を共有しておく
親からの委任のもと、キャッシュカードで子どもが引き出すことによって、手続きの負担が軽くなります。
使いやすい銀行での預金口座開設
前述のとおり、親御さんが取引をしている金融機関が地元の地方銀行や信用金庫のみだった場合には、子供の居住地域近辺の施設に呼び寄せたときにも使いやすい銀行口座をあらかじめ開設しておくことが有効です。
入居施設の事前の見学
親御さんの暮らしに関わることなので、できれば親御さんと一緒に見て回れた方が良いです。実際の入居の前に体験をしたいということであれば、ショートステイなどもできる可能性もあります。そうすることによって、入居後の不一致を防げます。
空き家管理会社に事前に相談しておく
親の住まいの地域で空き家管理サービスを提供している会社があったら、事前に相談をしておくというのも一つです。事前に複数箇所に相談しておき、もし本当に空き家になったらここにお願いをする、などと決めておくとその後の意思決定がスムーズにできます。また空き家管理サービス事業者は不動産会社が連携又は内製していることが多いので、相談の際にはご自宅について、売りに出した場合に売れるかどうかについても確認をしておくと、相場感がわかり次の一手が打ちやすくなります。
任意後見契約をしておく
親にまだ契約能力があるうちに、子どもと一緒に公証役場へ行き、将来財産管理ができなくなったときの後見人として、子どもをあらかじめ指定しておく契約です。
元気なうちは親が自分で財産を管理し、もし重い認知症などで管理ができなくなったときには、子どもがその契約書を持って家庭裁判所に申し立てることで、優先的に後見人に選ばれます。後見人として、預金の管理や施設の入居手続き、不動産の売却などを行うことができます。
家族信託で対策をしておく
守りたい財産をあらかじめ決めておき、子どもとの間で家族信託契約を結んでおく方法です。こうしておくと、親が認知症などになっても、任された財産については子どもの判断で必要に応じて動かすことができます(預金の引き出しや払い込み、不動産を親の代わりに売却して、その代金を子どもが管理することなどが可能になります)。
※詳しくは下記のページに動画解説付きで家族信託について紹介しています
↓
コラム:年金は家族信託できない財産
親の介護施設の費用の原資として、親の年金を頼りにしているご家族は少なくないでしょう。
ただ、すでに振り込まれている年金は、家族信託をして子どもが管理することができますが、これから入ってくる年金を家族信託することはできません。これから入ってくる年金は、親名義の口座でないと振込設定をすることが求められます。このため、家族信託では年金の対策ができません。
このような事情から、もし新しく預金口座を開設するのであれば、当該年金の振込先として指定ができる口座とし、当該口座が前述した「予約型代理人」サービスを提供しているようであれば、さらに安心度が上がります。
【8】まとめ
高齢の親が一人暮らしをしている場合には、ご家族から不安のご相談をよくいただきます。
「今は一人暮らしができているけれど、将来できなくなったときにはどうなるのか」
「たまに帰省したときに、以前より物忘れが進行しているような気がする」など、悩みは尽きません。
いざというときに突発的に起こってしまう問題としては、以下のようなケースが挙げられます:
- 家の中で親御さんが転倒して足を骨折し、病院に入院する
- 自宅での一人暮らしが困難になり、病院から施設への入居を勧められて慌てて施設を探す
こうなってしまうと時間との戦いになり、自由な選択ができなくなってしまいます。
そうならないためにも、特に遠方で離れて暮らしている親御さんがいる場合には、あらかじめ家族会議を開いて対策を備えておくことが大切です。そうすることで、子どもが支えやすい仕組みを整えていくことができます。
親が元気なうちに、兄弟みんなで集まって話し合っておくことが何よりの安心につながります。
もし専門家にも一度話を聞いてみたいという場合には、ホームページのお問い合わせフォームからご連絡ください。Zoomなどを利用して、全国どこでも対応しています。
SEARCH
NHK「クローズアップ現代プラス」に出演。「家族信託のトップランナー、司法書士」早くから認知症対策のへの必要性を感じ、10年以上前から家族信託に取り組む。取扱い実績の総額は100億円を超える。
家族信託業界の先頭に立ち、相談者様が安心して使えるようグレーゾーンを明確化にも注力。税理士と協力して行った国税照会により公表されたルールが業界のスタンダードにもなっている。
実績、お客様へのアフターフォローサービス、家族信託のお手伝いをしたお客様の声は、『代表者紹介ページはこちら』ボタンをクリック
メディア出演履歴
■テレビ出演
・NHK「あさイチ」
・NHK「クローズアップ現代プラス」
・NHK「ニュースウォッチ9」
・NHKラジオ「三宅民夫のマイあさ!」
・日本記者クラブにて記者会見
CATEGORY

